おじさんにあそこを揉まれた時からの、今の私
小学2年生くらいだったと思う。
私は友達の家に遊びに行き、まだ明るく、人通りも少しあるくらいの帰り道を歩いていた。大学のキャンパスなんかもあって、まさか犯罪が起こり得るとはあまり思えない道だった。
前から、男の人が歩いてきた。ただの通行人、私はそのまますれ違うんだろうな、という感じで歩き続けた。そして、男の人とすれ違う寸前、
「ちょっとごめんね」
男はそう言って、私のまんこを思い切り揉んだ。
何が起きたかわからなかった。頭は冷たくしびれて、硬直した。
実は、いつも道半ばまで歩くくらいに、迎えに来てくれる母と合流していたのだが、まさに、犯行は母に会う直前に行われたのだった。
私はなにがなんだかよくわからないまま茫然と歩き、自転車を押した母と合流した。
母はすぐに私の様子が変だと感じ、どうしたの、みたいなことを聞いた。
「ち、ちかんにあった」
がっと母の顔色が変わり、自転車を押し男を追いかけようとした。私はなぜかそれを止め、けいさつへいこう、けいさつ、ともごもごつぶやいた。
私を心配したのだろう、母は追いかけるのをやめ、警察へと向かった。
女の警官さんに人相なんかを聞かれ、(メガネをかけてた、くらいしかショックで覚えてなかった)、絵を描いたらうまいですね、なんて褒められて少し嬉しかった。パトカーで呼びかけてみますね、と言ったが、ショックで思考停止した小学2年生の証言などで人々がピンと来るはずもなく、今に至っても犯人はわからずじまいだ。
いま、20歳そこそこの私がその時のことを思い出してみても、そんなにショックではない、というより、ありのままの事実を受け入れると今でもおぞましすぎて吐きそうになるため、感情や記憶にフタをしているのだ。
私は病気とかに認定されたことはないが、余計なことを考えすぎたり、男の人とうまく関係をつくれなかったり、人間自体は好きだけどどこか拒絶してしまうなど、ちょっと困った部分が多い。
もしかしたら、幼少期のチカン行為や(やっぱり、露出狂とかと違って、まんこ揉まれるのはかなりトラウマだ)、両親の離婚なんかも今の私という存在を解き明かすものになるかと思って、ガチで当時を思い出そうとしたけど、気分が悪くなったりああすればよかった、という後悔や犯人に対する憎しみでイライラしてしまい、辞めた。
だから、今はフタをしたままにしておく。